パブで、ギター片手に吟遊詩人がうたう。帽子を深く被り、神秘的な雰囲気を醸し出す彼に人々は足を留め、その美声にうっとりと耳を傾けた
その彼が今、一人の男の指に弄ばれているとは気付かずに…。
吟遊詩人は平然とした様子で歌い続ける。しかし背後では男の指が、下肢の中心へと伸びていたのだ。
「神々は…ぁっ…」
「詩人さん?」
「ぁ…い、いえ…」
一人の夫人が自分を不思議そうに見つめる。きっと顔は羞恥に染まっていただろう…この時ほど、帽子を深く被っていて良かったと思ったことはない。モゾモゾとうごめく手をギターで隠しながら、ソレから逃げるように腰を軽く捩る
名も、顔も、何一つ知らない男にいきなり触れられて、酷く混乱したのは最初だけだった。その男は余程の腕なのか、手のなかへ包み込むように覆い、擦り上げられるたびに全身を走るような快感が得られるのだ
(この男は、私に何をさせたい…?)
与えられる快感に上ずってしまう声がでる。息も荒くなり、人々が不審を抱きはじめた時だ。するりと手は抜け、解放された
(…な、何で…)
弄ぶ手が無くなってみれば、張り詰めた自身は安堵どころか、快感を求める。ちょうど曲も終わる頃だ。吟遊詩人は早々に切り上げて、そのまま張り詰めた自身を解放せんとトイレへと駆け込んだ。
「ぁっ、んん…はぁっ…」
個室に入ると、ズボンをさげ先走りでぐちょぐちょに濡れた自身に手を這わせた。何度も何度もソレを上下させるが、ゆるい感覚が走るだけで中々快感を得られないのだ。
「あっ、あ…何で…ぇ…」
自分の体に起きている異変が飲み込めない。少し前ならば、自分自身で慰められたというのに…
何時まで経っても、解放されたいという願いからは遠退き、ただ長引くだけの熱が辛くて辛くて涙が流れた
ふと、ガチャンと音が聞こえた。扉は閉めてあるから誰も来ないだろう…と、詩人は安心して入ったのだが…その扉が開かれたのだ
「詩人たん…俺の手はヨかった?」
ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべた男が、入れるはずの無い部屋へと足を踏み入れる
恐怖と驚きから、声をだす事も出来ずに、その男を呆然と見つめた
「…な、なんで…」
やっと出た声は、どんなにか細かっただろうか。その声に男はただニヤニヤと笑いを浮かべ続けるだけだ
「自分じゃイケないんだろう?手伝ってやるよ」
どんどんと歩み寄り、距離が近づく。何より詩人には逃げる場所がなく、なすすべもなかった。声を上げれば人が来るが、この状況をどう云おうか。この姿を見られるのは屈辱でしかないのだ
ただ睨み上げるしか出来ない詩人に尚も、男は追い打ちを掛けるように言葉を続けた
「その姿じゃあ…慰めてたんだよねぇ?詩人たん自身で。でもイケなくて泣いちゃったのかなぁ…?」
「ち…違います…っ!!!!!!」
必死に頭をふり、否定する。しかし今の姿では説得力も無いようなものだった。その姿を嘲笑うかのようにクックと喉を鳴らしながら男は詩人に詰め寄った。詩人の手の中で切なげに震える自身を掴みあげ、耳に息を吹き掛ける。
「あーあ…こんなにビショビショじゃないか。詩人たんって綺麗な顔して淫乱だね」
「…っ!!」
涙が詩人の頬を流れる。言い返せない言葉は詩人の羞恥心が増すだけで…なぜ、知らぬ男にイジられた挙げ句、この様な仕打ちを受けねばならないのだと詩人の心を抉っていった。
唇を噛み締め、瞳を潤ませる姿に男は満足した様子を見せる。そのまま手を、あの時のように蠢く生きもののように詩人自身に這わせた。詩人は眉を寄せて必死に声を堪えようとするが、すぐに指で唇を抉じ開けられてしまう
「あぁっ…はっ…」
「そうだよ…詩人たんの可愛い声を聞かせてくれなきゃ」
「ぃ、ぃゃ…あぁっ…」
一度出てしまった声は、引っきりなしに上がってしまう。自身だけの愛撫だと思っていたのに、胸に唇が押しつけられ、首筋から衣服を剥ぐように舌が這っていく。
舌のヌメリを帯びた感触に詩人は身悶え、腰を捩る。こんな事に気持ち良いと感じている自分が信じられなくて、これは夢だと思いたかった
「んん、ふぅ…は…」
「詩人たんのここ…赤くなって可愛いよ」
「な、ぁっ…ああぁっ…!!」
赤くなった胸の突起を舌で覆い、歯で軽く噛まれる。とたん、ぴりぴりと走った感覚に詩人は思わず声を上げてしまった。
「ここがいいんだ?詩人たん、淫乱だから何処でも感じちゃうの?」
「ひ、っあ、やぁ…」
くわえられたまま喋られ、ビリビリとかすかな振動が伝わる。それさえも快感につながるのは容易くて。
手も、なぶる様に動いていたのが、突如、追い上げるように動いたのだ。
詩人が達するのは、早くなかった。男の手に詩人は熱を吐き出してしまったのだ
「あ、ぁ…ぁ…」
男の手には自分が吐き出した白濁の液体。そしてソレをうっとりと見つめる男。
目を背けたくなる事実が目の前に、真実としてあるのだ。詩人は逃げたくて逃げたくて堪まらなくなった
「詩人たん、いっぱい出たねぇ?溜まってたの?」
「…ひっ…ぅ、っ…」
うっとりとした表情を見せたまま、詩人自身が吐き出した熱を見せ付けるように顔に近付ける。ツンとした独特な匂いが鼻腔に漂う
詩人はただ泣くしか出来なかった。その事実から逃げようにも逃げられないから
「くくっ…詩人たんが、そんな表情するから俺も勃っちゃったよ」
「!?」
目の前に男の欲望を主張するものが、曝け出される。今まで見たことの無いソレは詩人と比べ、色も形もグロテスクでしかない。
詩人はあまりの恐怖に瞳を揺らし、凝視してしまう。
「あんまり見られると余計大きくなっちゃうじゃないか…。ああ、そうか。詩人たんは、その小さいお口にコレをくわえたいんだね?」
ニヤニヤと笑う男の言葉に詩人は驚愕する。何処からそんな考えがでたのか、不思議で、その言動は男の身勝手さがうかがえた。詩人の気持ちなど気にもしないのだ
違う、と否定の言葉を投げようとした、その時だ。口に、その男の牡を無理矢理ねじこまれたのだ
「んんっ…ふぅぅっ!?」
吐き出そうと舌で、押し上げるが、その行為はただ男を喜ばす事にしかならなかった。息苦しさと気持ち悪さに、胸が締め付けられる
詩人は、噛み切ってやろうかと思ったが、男が腰を前後し喉奥にまで突っ込まれ、それさえも出来なかった
胸につのるのは嫌悪感だけだ
「はぁはぁ…詩人たん、いいよ。はぁはぁ…」
「んっんぅ、っ…んっ」
男は恍惚とした表情で、息を荒げる。それと同時に腰の動きも早めた
「はぁ、詩人たん、イくよ…ッ!」
「んんっ!?」
そう云われたのも束の間、男は詩人の頭を掴み、口から抜き出すと詩人の顔面へと熱を吐き出した。
詩人の顔に白濁とした液が飛び散る。口のなかにも入ってしまったのか、詩人はむせるようにゴホゴホと咳き込んだ
口のなかに青臭く苦い味が広がる。顔についたべたつく精液が気持ち悪くて詩人は眉を寄せキッとにらみつけた。
「はぁはぁ…詩人たん、いい顔だね。でも今日はここまでだよ…また明日、ね」
「な…!?」
そう言い男はニヤリと笑う。衣服を軽く整えると、詩人を置いたまま扉から立ち去っていった。